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大学コラム

Small is Beautiful

学長 足立 英之

 第一次石油危機の最中の1973年に、シューマッハー(E.F. Schumacher)という経済学者が“Small is Beautiful”(小なるは美なり)というタイトルの本を出版しました。彼はそのなかで、経済システムの大規模化がすでに自然の許容限度を超えて進み、それが人間性をも蝕んでいると警鐘を鳴らしました。巨大技術が現代世界にもたらしているさまざまな危機を指摘し、「人間の背丈にあった技術」の必要性を説きました。それから30年余り経ちましたが、技術のいっそうの巨大化と経済のグローバル化が進むなかで、資源問題や地球環境問題は深刻化し、先進国と途上国の経済格差や各国内での所得格差は拡大するなど、シューマッハーの指摘した危機が克服される方向に向かっているようには見えません。
 それはともかく、シューマッハーの著書はベストセラーとなり、「スモール・イズ・ビューティフル」は、人間中心の新しい社会への道を探る人々の合言葉となりました。私はこの本の思想に共感し、それを繰り返し読みました。ちなみに、この本のタイトルは、同書のなかの次の文章から編集者が命名したものです。「人間は小さいものである。だからこそ小さいことは素晴らしいのである。」
 本当に、小さいもので素晴らしいものはたくさんあります。尾道市立大学も小さいことの良さをもつ大学ではないでしょうか。尾道市立大学の学長に就任してから3ヶ月が過ぎましたが、尾道市立大学のことが次第に分かるにつれて、まさに「スモール・イズ・ビューティフル」という言葉が本学には当てはまると実感するようになりました。こぢんまりしたキャンパスですが、きれいに整備され、周囲の環境も抜群です。在学生1,400人余り、専任教員60人弱という小規模の大学であるがゆえに、本大学では徹底した少人数教育が可能となり、教職員と学生あるいは学生同士の間に互いの顔が見える人間的な関係が成立し得ます。他方で、尾道市立大学は小規模の大学であるにもかかわらず、比較的広い分野にわたってバランスのとれた科目を揃えており、幅広い知識と教養を身につける条件は整っています。経済情報学部が提供する経済学・経営学・情報科学は実生活にかかわる学問、そして芸術文化学部が提供する文学や美術はいわば生活に命を与える学問と言えます。これらの分野を幅広く学ぶことを通じて、本学の学生の皆さんが広い視野と柔軟な考え方を身につけることを私は期待しています。大きい大学でないとできないこともあるでしょうが、小さい大学には大きい大学にはない良さがあります。皆さんがこのことを認識し、その利点を生かしながら、有意義な大学生活を送ってほしいと念願するものです。
 人生のなかで大学の4年間ほど自由であるとともに、貴重な時期はありません。この貴重な時期に、大学での授業からできる限り多くのことを学び、多くの本を読み、多くの友人をもち、さまざまな経験をし、それによって自分を磨いておくことが、将来大きな花となって開くことでしょう。シューマッハーは、同じ著書のなかで、資源問題や環境問題を解決するのは人間の知恵であり、その知恵を育てるのは教育であると指摘し、「だから、本当の意味で教育こそあらゆる資源のなかで最も重要である」と述べています。将来の社会を担うのは自分達だという自覚をもって、「今を大切に」励んでいただきたいと思います。


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