藤川功和 研究室紹介

マイノリティ・リポート

 

芸術文化学部日本文学科 教授 

藤川 功和 FUJIKAWA Yoshikazu 
専門分野:日本中世文学

 

自己紹介

主に鎌倉時代の和歌を研究しています。と言っても、藤原定家や『小倉百人一首』、『新古今和歌集』といった、古典にあまり関心がない方でも名前だけは知っているであろう、メジャーな歌人や作品には目もくれず、後嵯峨院(ゴサガイン)[1]だの『続古今和歌集』(ショクコキンワカシュウ)[2]だの『温故抄』(オンコショウ)[3]だの、コロナ禍が吹き荒れますます先行きが不透明な現代社会において、一生知らなくても1ミリも困らない歌人や歌集に触れては、勝手に喜んでいます。
でも、例えば、藤原良経(フジワラノヨシツネ)[4]の息子基家(モトイエ)は、藤原定家に全く評価されなかった歌人ですが、彼の編んだ歌集[5]や主催した歌合[6]を読むと、王道とは言い難いけれど、彼なりに〈より良い和歌〉を模索した形跡が伺えて、それはそれで少数派から見た当時の和歌の内実を理解する一助になるのではないかと、ぼんやり考えています。

 

〔自己注〕

[1]承久の乱で隠岐に流された後鳥羽院のお孫さん。
[2]後嵯峨院が撰集を下命した我が国第十一番目の勅撰和歌集(1265 年完成)。
  ちなみに一番目は、かの有名な『古今和歌集』(905 年完成)。
[3]これまた知る人ぞ知る歌人藤原行家(フジワラノユキイエ)の編んだ歌学書。
  下記の研究会のメンバーで、同書上巻・中巻の翻刻本文を作成し、『尾道市立大学芸術文化学部紀要』18 号・19 号に掲載済み。現在、下巻を調査中。
  この内、上巻は、下記アドレスからダウンロードできます。
  http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/onomichi-u/list/journals/尾道市立大学芸術文化学部紀要/_/18
[4]『小倉百人一首』に詳しい方にはお馴染みの歌人。
  「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかもねむ」
  (91番・後京極摂政前太政大臣)
[5]『雲葉和歌集』(ウンヨウワカシュウ)。建長五年(1253)三月~同六年三月成立。
[6]建長八年『百首歌合』。父良経主催の『六百番歌合』を模したものか。

 

研究室紹介

日本文学科では、需要と供給のバランスが絶妙でして、マイナーな領域にしか興味を示さない教員のもとには、マイナーな作品を好むマイノリティーの学生さんが、毎年1名~2名ほど研究室に迷い込んできます。
そんな物好きな方達と、研究室を活動拠点に「尾道市立大学中世文藝研究会」を運営しています。まだ注釈書のない、中世の歌書の類や、江戸時代に刊行された『百人一首』の絵入り版本等を、あーでもない、こーでもないと読み合わせています。

 

下の写真も、中世文学における鍋とコタツの関係性について、文字通り熱のこもった議論を展開中な研究会の一コマです。

 

現在は、件の災難により大学が閉鎖され、研究室も(見たことないけど)応仁の乱後の都の如く荒れ果ててしまいましたが、近い内に研究室も研究会も再始動する予定です。
世上が落ち着き、お近くまでお越しの際は、是非研究室に遊びに来て下さい。お茶とお菓子と見たこともない古本の三点セットで、歓待いたします。