公開日 2023年01月31日
2023年1月19日(木)の17時から18時50分過ぎまで、恒例の「経済情報学部公開ゼミ研究発表会」を開催しました。
例年であれば「しまなみ交流館」を利用し、市民の皆様にも開かれた発表会とするところです。しかし、コロナウイルス感染症拡大防止のため、今年度は本学学生・教職員に対して、学内教室での対面とオンタイム(ライブ)での開催となりました。参加者は40名(学生:23名、教職員:17名)でした。
本学学生・教職員のみの研究発表会でしたが、発表者の4年生3名はしっかりと各自の研究成果を発表し、その後の質疑応答も時間を超過する程活発なものになりました。学生のみならず教職員にとっても大いに知的刺激を得られる貴重な機会となりました。
当日の次第
学部長挨拶:小川長(教授)
経済コース:小山奈桜(堀江ゼミ)
経営コース:五島可純(前田ゼミ)
情報コース:井上桜太(木村ゼミ)
司会進行:前田謙二(教授)
発表要旨
○小山奈桜「食品ロス問題解決のための提言」
私は、食品ロス問題の現状や発生原因、さらに解決に向けた取り組みについて考察しました。現在の日本における食品ロス量は年間522万トンです。これは、国民一人一人が毎日おにぎり1個分程度の食品を廃棄している計算になります。食品ロスの発生原因には、消費者の食品ロスに対する認識の低さや鮮度志向、それに応えようとして生まれた商慣習などが考えられます。
事業活動を伴って排出される事業系食品ロスの削減に向けた取り組みとして、商慣習の見直し、食品リサイクル法について調査し、これらの取り組みの注意点・問題点についても考察しました。その結果、食品ロスの削減のためには企業の取り組みや制度の改革だけでは限界があることがわかりました。事業系とは言うものの、消費者には無関係というわけではありません。つまり、企業と消費者の双方の取り組みが必要となります。事業系食品ロスのさらなる削減のためには、現行の政策において従量的な規制を行うことだけでなく、消費者の食品ロスに対する意識改革や行動変容が求められると考えられます。
今後は、事業系だけでなく、家庭系食品ロスの削減方法や消費者の意識改革のためにはどのようなことが効果的かなどについて考察し、問題解決に導くことが課題となると考えられます。
○五島可純「医療費控除改正の方向性の検討-制度趣旨に着目して-」
私は、所得税法における医療費控除の妥当性について考察しました。所得税法には、所得の一部を課税対象から除く所得控除があります。所得控除の一種である医療費控除は、一定以上支払った医療費を所得から控除できるという制度です。公的医療保険制度が充実している今、医療費控除の存在意義が薄れていると考え、所得控除の中でも医療費控除に焦点を当てて、医療費控除のあるべき姿を検討しました。
医療費控除の制度導入時の趣旨とその後の改正を踏まえたうえで、現行制度の趣旨を確認し、実際の裁判でどのように解釈されているのかを確認しました。制度趣旨と包括所得概念の考え方から、医療費控除は政策的に導入されたものであると評価しました。また、高額所得者の方が低額所得者に比べ税負担軽減効果が高いという所得控除の性格を考えると、担税力の低下を救済するための医療費控除は所得控除には適さないと判断しました。
そこで、医療費控除はどのような姿であるべきかを検討し、現行の他の制度や過去の実例を見た結果、税制と社会保障制度との一体化・連携が重要であると考えました。医療費控除は、他の控除制度や社会保障制度との関係性を十分に考慮したうえで改正が必要であると考えられます。
○井上桜太「YouTubeの動画を利用したドライブコースの推薦」
私は、YouTubeの動画を利用したドライブコースの推薦について研究しました。ドライブや観光の際の運転において景観の良さは運転を楽しむうえで重要だと考えました。そこでドライブコースの景観について話しているYouTubeの動画を利用して、ドライブコースの評価を行いました。提案手法の特徴は、視聴回数、高評価数などの動画の測定指標と、その動画に投稿されたコメントの分析結果を組み合わせることで、紹介されているドライブコースの評価をおこなうことです。
中国地方の各県につき、「○○県 ドライブコース」、「○○県 ツーリングコース」と検索を行いそれぞれ五つの動画を抽出しました。コメントはosetiという感情分析ツールを用いて印象の良し悪しを推定し、その結果とキーワードを基に分類分けを行い、分類ごとに点をつけスコア化を行いました。
検証実験として、日産ドライブナビというサイトのドライブスポットランキングと提案手法の結果と比較を行いました。YouTubeで収集を行った動画のコースで通過するスポットや寄り道が可能であるスポットを含むコースが多くあり、ある程度の一致はあると考えられました。そのうえでYouTubeという動画を利用したことで、日産ドライブナビにはない場所を通るルートが上位にあることから、YouTubeを利用することによって得ることのできた評価の高いコースを知ることが出来ました。
評価を行った動画条件や評価を行う計算式、コメントの分類方法などを変えることによって評価が大きく変わる可能性があるため、さらに検証を重ねて改良する必要があると考えています。
学外者の皆様へ
研究発表会の模様はすべて録画してありますので、ご関心をお持ちの皆様は尾道市立大学経済情報学部経済情報学科までお問い合わせください。
電話:0848-22-8311(代) メール:jimukyok@onomichi-u.ac.jp
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